意見照会書が届いたら|まずやるべきこと・やってはいけないこと
ある日突然、プロバイダから届く「発信者情報開示に係る意見照会書」。身に覚えがあってもなくても、この書面を受け取った瞬間は誰でも動揺します。
ただ、ここで焦って判断を誤ると、後の交渉や裁判で不利になります。逆に、正しい手順で対応すれば、被害を最小限に抑えられる可能性は十分あります。
この記事では、意見照会書が届いた直後にやるべきこと、やってはいけないことを整理します。特にBitTorrent(トレント)利用に関連して届くケースを中心に解説します。
そもそも意見照会書とは何か
「発信者情報開示に係る意見照会書」とは、インターネット上で権利侵害(著作権侵害や名誉毀損など)があったとして、被害者側がプロバイダに対して発信者情報の開示を求めた際に、プロバイダが契約者に送られてくる書類です。
プロバイダは、回答がなければ自らの判断で情報を開示できます。ただし、回答がなくても裁判所が開示命令を出せば、開示されます。
意見照会書は、届いた時点ではまだ「問い合わせ」の段階です。ここでの対応次第で、その後の展開は大きく変わります。
意見照会書が届いたら、まずやるべきこと
書面と回答期限の確認
まず封筒の中身を確認してください。開示を請求している者(権利者やその代理人弁護士)、侵害の内容、回答期限などが記載されています。
回答期限は通常14日以内に設定されています。期限が迫っている場合は、プロバイダに連絡して「弁護士に相談してから回答したい」と伝えれば、延長に応じてもらえることがあります。
心当たりがあるかを確認する ― 書面のここを見てください
意見照会書には、侵害情報の記載欄があります。ここに、権利者側が問題としている行為の具体的な内容が記載されています。
特に注目すべきは以下の点です。
- 日時(タイムスタンプ):いつの通信が問題とされているかが記載されています。「○年○月○日○時○分」という形式で、あなたのIPアドレスからファイルのアップロード(送信)が確認された日時です
- 対象ファイルの情報:ファイル名や作品名が記載されていることがあります。どの著作物に関する請求なのかを確認してください
- IPアドレス:あなたの回線に割り当てられていたIPアドレスが記載されています
この日時に、自分自身がトレントを利用していた心当たりがあるかどうかが重要です。
「全く覚えがない」という方も少なくありませんが、プロバイダはIPアドレスとタイムスタンプに基づいて意見照会書を送付しているため、誤送付の可能性はきわめて低いです。以下の点も確認してみてください。
- 過去にBitTorrentクライアントソフト(μTorrent、qBittorrentなど)をインストールしたことがないか
- トレントクライアントをインストールしたまま放置していないか(バックグラウンドで動作し続けている場合があります)
- 家族や同居人がトレントを使用していないか
- Wi-Fiのセキュリティが甘く、第三者に利用された可能性がないか
証拠になりうるものを保全する
トレントクライアントのインストール履歴、ダウンロード履歴、PCのログなどは、削除せずに保全してください。
「証拠を消せば逃げられる」と思うかもしれませんが、権利者側はすでにIPアドレスとファイル共有の記録を取得済みです。こちら側の記録を消しても状況は改善しません。むしろ、自分に有利な情報まで失うことになります。
弁護士に相談する
意見照会書への対応は、法的な判断を伴います。同意するにしても拒否するにしても、その判断が後の示談交渉や裁判に直接影響します。
自分だけで判断せず、弁護士に相談してから回答することを強くお勧めします。
絶対にやってはいけないこと
無視する・放置する
「回答しなければ開示されない」と思うのは間違いです。プロバイダは回答がなくても、自らの判断で情報を開示できます。さらに、裁判所が開示命令を出せば、回答の有無にかかわらず開示されます。
無視したという事実は、後の交渉や裁判で「誠実に対応する姿勢がなかった」と評価され、不利に働く可能性があります。
焦って自分だけで回答書を書く
意見照会書には回答書が同封されています。チェックを入れて返送するだけに見えますが、ここで判断を誤ると取り返しがつきません。
「同意しない」を選ぶ場合、不同意の理由を具体的に記載する必要があります。法的に的外れな理由を書けば、その内容がプロバイダ側の裁判資料として使われます。
一方、安易に「同意する」を選んだ場合も、その後すぐに権利者側から高額な損害賠償請求が届くことになります。金額が妥当かどうかの判断なしに対応するのは早計です。
相手方に直接連絡する
意見照会書に記載されている権利者や代理人弁護士に、自分から直接連絡を取るのは避けてください。相手は交渉のプロです。動揺している状態で接触すれば、不利な発言や不用意な認諾をしてしまうリスクがあります。
連絡を取るなら、必ず自分側の弁護士を通してください。
SNSやネットで相談する
「意見照会書が届いた」という内容をSNSや掲示板に書き込むのは危険です。匿名のつもりでも、書き込みの内容から個人が特定される可能性があります。また、ネット上の情報は玉石混交で、不正確なアドバイスに従って対応を誤るリスクが高いです。
回答の選択肢は3つ|それぞれの結果を知っておく
選択肢1:開示に同意する
プロバイダは権利者側にあなたの氏名・住所などの個人情報を開示します。その後、権利者側から損害賠償請求の通知書が届きます。トレント関連では、1作品あたり数十万円の請求がなされることが多いです。
同意すること自体が不利になるわけではありません。むしろ、権利侵害の事実が明らかな場合は、同意した上で早期に弁護士を通じた交渉に入るほうが、結果的に負担を抑えられるケースもあります。
ただし、相手の請求額をそのまま受け入れる必要はありません。裁判で認定される損害額と、相手方が請求してくる金額は異なることが多いです。弁護士に依頼し、適正な金額での解決を目指すべきです。
選択肢2:開示に同意しない(不同意)
不同意の理由を具体的に記載する必要があります。この理由はプロバイダが裁判所に提出する資料に反映されるため、法的に筋の通った内容である必要があります。
不同意と回答しても、裁判所が開示を命じれば個人情報は開示されます。不同意=開示を完全に阻止できる、というわけではありません。
トレントの場合、心当たりがあるなら同意をお勧めします
当事務所で多数の案件を扱ってきた経験上、トレント関連の場合、不同意と回答しても最終的に開示されてしまうケースが大半です。権利者側はP2P監視システムによる通信記録を証拠として保有しており、裁判所がこれを覆すことはほとんどありません。心当たりがある場合は、開示に同意した上で、弁護士を通じて適正な金額での示談交渉に入るのが現実的な対応です。
選択肢3:回答しない(非推奨)
回答しなくてもプロバイダの判断や裁判所の命令で開示は進みます。回答しないことにメリットはほぼありません。
弁護士に相談する際のポイント
「とにかく早く解決したい」という気持ちから、最初に相談した事務所にそのまま依頼してしまう方が多いですが、弁護士選びは慎重に行ってください。
相談時に、最低限以下の点を確認してください。
- 裁判になった場合、損害賠償額はいくらが妥当か:この見通しがなければ、示談金額が適正かどうか判断できません。見通しを示さない弁護士には注意が必要です。
- 減額交渉をしてもらえるか:相手の請求額をそのまま受け入れるよう勧めるだけの弁護士もいます。それでは弁護士に依頼する意味がありません。
- 弁護士本人が対応するか:事務員とのやり取りだけで、弁護士本人と話せないケースがあります。重要な判断を要する案件で、弁護士が直接対応しないのは問題です。
安易に高額な示談金を支払う必要はありません。かといって、根拠なく拒否を続ければ裁判に発展し、結果的にコストが増える可能性もあります。冷静な判断が必要です。
まとめ
やるべきこと
- 書面の内容と回答期限を確認する
- 侵害情報欄の日時・ファイル名を確認し、心当たりがあるか振り返る
- 証拠を保全する(削除しない)
- 弁護士に相談してから回答する SUMMARY_BAD:やってはいけないこと
- 無視する・放置する
- 焦って自分だけで回答書を返送する
- 相手方に直接連絡する
- SNSやネットで相談する
意見照会書は、届いた時点ではまだ「問い合わせ」の段階です。ここでの対応次第で、その後の展開は大きく変わります。
冨田・島岡法律事務所に相談する
当事務所では、トレント関連の意見照会書・開示請求案件を多数取り扱っています。
- 安易な示談は勧めません。相手方の請求額が妥当かどうか、裁判になった場合の見通しを踏まえ、減額交渉を前提に対応します。
- 弁護士が直接対応します。事務員任せにせず、弁護士本人が相談から解決まで一貫して担当します。
- 最速で当日面談が可能です。意見照会書の回答期限は短いため、急ぎの方にもすぐに対応できる体制を整えています。
初回相談は無料。LINE・メール・電話での問い合わせに対応。全国どこからでもオンライン相談可能。
